著者は2012年に開催されたWSOP(ワールドシリーズオブポーカー)で、ポット・リミット・オマハ・シックス・ハンデッド部門で優勝した人。
目次プロローグ
- みずから競争に参加する
- 強くなれる場に飛び込む
- スタートの環境は厳選する
- 成長に繋がるのは真剣な時間だけ
- 短期間で可能な限りの経験値を積む
- 点検して試行錯誤する
- 高い集中力を身につける
- 強者を観察して真似る
- 変化こそ人間の能力だ
- 情報からノイズを排除する
- 勝ってる時こそやり方を変える
- 不完全情報ゲームに「神」はいない
- 淡々と「期待値」で動く
- 運がきた時に勝ち切るために
- 感情にかられれば負ける
- 初めてのWSOP
- WSOP2012
- DAY2、オールイン8連勝!
- WSOP2012で日本人初の優勝!
エピローグ
非常に面白く読むことができました。
私が注目したのは、次の2点です。
- どのようにして木原氏がプロとしてのレベルに達したのか?
- プロポーカープレイヤーとして、オンラインと実際のカジノでどのようにプレイしているか?
本の前半は、木原氏が、自分の体験から
- そろばん
- 将棋
- 麻雀
- バックギャモン
- ポーカー
などの習い事やゲームに、いかにして上達したかが書かれており、大いに啓発されました。
特に、木原氏がポーカーで強くなるために、オンラインのポーカーで腕を磨いたことには、私がポーカー事情に詳しくないこともあり、目からウロコが落ちました。インターネットが普及しだした1995年頃にもオンラインカジノはありました。
しかしながら、正直に運営されているか、あまり信頼していなかったので、オンラインポーカーについても関心が薄かったからです。
インターネット利用者が増えたきっかけは、Windows 95の発売だと理解しています。
TCP/IPが付いてきたからです。
「インターネットの死角」(結城史郎 著)という小説が翌年の春に出版され、その中に日本人がオンラインカジノを経営するというエピソードが出ていました。
将棋の羽生善治が七冠に挑んだのが同じ年の1996年。
NHKで放送されたドキュメンタリー番組がありました。その中で最も印象に残っているのが、両者の勉強風景の違いでした。
羽生氏はパソコン画面に将棋盤を表示させ、棋譜を呼び出し、次々と表示画面を変化(前に戻ったり、先に進めたり)させていました。一方、中原氏は実際の将棋盤にコマを並べ、棋譜を見ながら、コマを動かしていたのでした。
(これは、羽生氏の方が中原氏に比べ、10倍速で将棋の勉強をしているのではないか?)と、当時非常な衝撃を持って映像に見入りました。
その後も、羽生氏と梅田望夫氏との対談を読み、「高速道路の先は大渋滞」という言葉を知りました。
すなわち、パソコンやネットを活用することで、時間と費用の面で、はるかに効率的に将棋の習得ができてしまう。その半面、ある一定のレベルに到達した人の数が増え、そこから先の競争が激化しているということ。
「高速道路」については、「運と実力の間」の木原氏の本でも、「4.成長に繋がるのは真剣な時間だけ」の「若い人は強い」や「頭脳ゲームを席巻するネット出身者」という節で
- オンラインポーカーで腕を磨いた、過去4回のWSOPで優勝した21歳、23歳、23歳、24歳のプレイヤーたち
- ネット碁で強くなった囲碁の井上裕太本因坊
- 2011年の大和証券杯ネット将棋・最強戦で優勝した菅井竜也四段(当時)
- 東風戦で強くなった麻雀の小倉孝プロ
の例が紹介されていました。
また、「大渋滞」については、ポーカーの世界でも真実のようです。
「高速道路とけものみち」などの章で繰り返し指摘されていました。