2010年8月アーカイブ

The Quants」ですが、昨日書店に行ったら、邦訳(「ザ・クオンツ」、角川書店)が出ていました。
奥付を見ると、出版日は2010年8月31日。
米国で単行本が出たのが今年の2月。年内に邦訳が出るのは、難しいのではないか?と考えていたので、チョッとビックリしました。

The Quants」の中に、Boaz Weinsteinという人物が出てきます。
本職のトレード以外にも

  1. チェス
  2. ポーカー
  3. ブラックジャック
のようなゲームにも打ち込んでいて、チェスは「ライフマスター」という称号の保持者です。
職場であるドイツ銀行で、ロシア人の部下とチェスで勝負するシーンが出てきます。
そのままでは部下に勝ち目はありません。
ハンデとして、Weinsteinはチェスの盤面を見ないでプレイをするのですが、相手に勝ってしまうのです。
そうした「ゲームの達人」のようなBoaz Weinsteinが、LTCMの破綻、サブプライム危機、リーマンショックといった非常時に、どのように行動したかが、本書では興味深く描かれています。

金融業界に縁が深く、チェスの達人といえば、下記の2人の名前が浮かびます。

  • Peter Thiel (米国の元チェスマスター)
  • Kenneth Rogoff (1978年のグランドマスター)
Peter ThielはPayPalやLinkedInの創業者。
ベンチャー・キャピタリストとしてFacebookにも出資。
「Facebook」(青志社、ベン・メズリック著)では、その辣腕ぶりを垣間見ることができます。
ヘッジファンドも経営していたのですが、リーマンショックでは深手を被った模様。

Kenneth Rogoff は、元IMFのチーフ・エコノミスト。
現在はハーバード大学教授。

「1997年――世界を変えた金融危機」(朝日新書、竹森俊平著)の中で、紹介されている部分があります。

経済情勢に関するコメントが注目を集めることが多いです。

▼日本の財政赤字、「崩壊寸前」=増税、歳出削減が不可避?ロゴフ・ハーバード大教授


(引用)
(目次)
オールイン
ゴッドファーザーことエド・ソープ
マーケットをぶっとばせ
ボラティリティ・スマイル
四人のクオンツたち
オオカミ
ザ・マネー・グリッド
夢の実現
「将来の成功を祈っている」
八月の異変
運命の時計
欠陥
悪魔の仕業
ダークプール


The Quants」の中には、面白いエピソードが沢山あるのですが、特に気に入ったエピソードを幾つか紹介します。

Peter Mullerという人物が出てきます。
彼の話は「市場リスク 暴落は必然か」( 日経BP社 / リチャード・ブックステーバー著)にも少し出てきます。
※「ミュラー」という名前で登場。実際は「マラー」と発音するのが正しいようです。

モルガン・スタンレーでは世界中の市場を分析し、トレードをするロボットを開発。
自動化をしすぎてしまったため、やることがなくなり、モルガンに籍を置いたまま、自分探しの旅に出たり、ストリートミュージシャンになったり、音楽CDを出したりと、非常に変わった人です。

▼Peter Muller のウェッブサイト

5人の中では最もポーカーに熱中しているようです。
インターネットの普及によって、オンラインポーカーの利用者が激増したことから、Peter Muller 氏はオンラインポーカーを対象市場としたヘッジファンドを立ち上げようと、一時は考えたとのこと。

これは突飛なアイデアのようでもありますが、「フィル・ゴードンのポーカー攻略法 入門編」(パンローリング)に出ているエピソードとして、オンラインポーカーでは、

  • カジノのテーブルで行われるポーカーに比べ、ゲームの消化が早い
  • 同時に複数のテーブルでプレイできる
  • カモ(初心者)が多数いる
などの理由により、強いプレイヤーは今まで以上に稼げるようになったとのこと。

ポーカー用のロボットを開発したり、人件費の安い国でポーカーの才能がある若者を発掘し、軍資金を与えれば、ポーカー・ヘッジファンドも単なる空想ではないような気がします。
約10ヶ月ぶりの再開です。
トレードとポーカーについて記事を何本か書こうと思います。

  • The Quants: How a New Breed of Math Whizzes Conquered Wall Street and Nearly Destroyed It
という本が2010年の2月に出ました。
翻訳が出るのが待ちきれず、アマゾンで入手。

クオンツ代表として、下記の5人が出てきます。

  1. Peter Muller (モルガン・スタンレーの社内ヘッジファンド)
  2. Ken Griffin (シタデル)
  3. Jim Simons (ルネッサンス・テクノロジー)
  4. Cliff Asness (AQR)
  5. Boaz Weinstein (ドイツ・バンクの社内ヘッジファンド)
いかにして、ヘッジファンドを立ち上げるに至ったか、サブプライムショックとリーマンショックの前後で彼らの明暗がどう分かれたか、について豊富なエピソードを交え、紹介しています。

また、彼らと関係があった人物として次のような人物が登場します。

  1. エド・ソープ (「ディーラーをやっつけろ!」)
  2. ドアン・ファーマ (「マネーゲームの予言者」)
  3. アーロン・ブラウン (「ギャンブルトレーダー」)
  4. ベノワ・マンデルブロ(「禁断の市場-フラクタルでみるリスクとリターン」)
  5. ビル・グロス(「発想の大転換―21世紀に向けての投資運用」、「債券王ビル・グロース 常勝の投資哲学」)

ポーカーとのかかわりですが、成功したクオンツは仲間(ライバル)同士でプレイすることを好むようです。

▼チャリティを目的としたポーカー大会

主催者のメンツが豪華です。

※2010年8月29日、加筆しました。

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